民事信託と商事信託の違い

そもそも「信託」とは?

信託とは信頼できる個人または法人に財産を託し、特定の目的に沿って管理・承継する方法

信託とは信頼できる個人・法人に財産を託し、特定の目的に沿って管理・承継する方法「商事信託」「民事信託」「福祉型信託」「個人信託」など、信託と名が付く言葉は世の中にたくさんあります。それでは、そもそも「信託」とはどのようなもののことを言うのでしょうか?

「信託」とは、財産の所有者(委託者)が契約により信頼できる人(受託者)へ預貯金や不動産、有価証券などの財産を移転し、ある特定の目的(信託目的)に沿って誰か(受益者)のためにその財産(信託財産)を管理・運用・処分することを指します。

従来、信託は信託銀行や信託会社などが報酬(信託報酬)を得るために営利目的で行う商事信託が一般的でしたが、平成18年12月の信託業法改正・平成19年9月の改正信託業法施行により、営利を目的としていなければ信託業免許を持たない個人・法人でも受託者になれるようになりました。これを民事信託と言います。

民事信託は、商事信託と違って、信託業法の制限を受けません。そのため、民事信託の場合、受託者は個人・法人を問わずに誰でもなることができます。

高齢化・核家族化にともない注目される民事信託

高齢化・核家族化にともない注目される民事信託近年の高齢化や核家族化にともない、よりご自身の想いや願いを反映した財産管理や、スムーズな承継などを行うための方法として、民事信託が注目されています。それは、例えば財産の所有者が認知症などにより判断能力が不十分になったとしても、所有者や所有者の大切なご家族のために財産を守ることができるからです。

民事信託は、ご家族が受託者になることが多いことから「家族信託」と呼ばれたり、障がいのある子供や親族のために活用することから「福祉型信託」と呼ばれたり、個人が受託者となることから「個人信託」と呼ばれたりすることがありますが、呼び方が違うだけで、大きな枠組みではこれらはすべて民事信託に含まれます。

民事信託と商事信託の違い

商事信託は営利目的で行われます

信託銀行や信託会社などが財産の所有者から信託契約により財産を託される受託者となり、財産の管理・運用・処分などを行うものです。
営利目的で行われるので、場合によっては高額な信託報酬を支払わなければいけない場合があります。

民事信託は営利を目的としない信託です

信頼できる個人・法人が受託者となり、財産の管理・運用・処分などを行うものです。
平成18年12月の信託業法改正・平成19年9月の改正信託業法施行により、営利を目的としていなければ信託業免許を持たない個人・法人でも受託者になれるようになりました。

民事信託にはこんな特徴があります

民事信託では様々な財産が承継できます

民事信託で承継できる財産は、実に様々です。不動産だけでなく、金銭、金銭債権、有価証券、知的財産権、動産(ペットなども含む)など、色々な財産を承継することができます。

商事信託と比べて費用が抑えられる

信託銀行や信託会社などを通した商事信託の場合、高額な信託報酬を支払う必要があり、一部の資産家を除いて気軽に利用するのは難しいと言えますが、民事信託であれば受託者が営利を目的とせずに引き受けるものであり、信託業法の制限を受けないので一般のご家族でも気軽に利用することができます。

財産管理委任契約・成年後見制度・遺言を一本化できる

従来の財産管理の方法では、財産の所有者が元気なうちは「財産管理委任契約」で管理を行い、認知症などで判断能力が不十分になった時には「成年後見制度」の活用による管理に移行し、お亡くなりになられた後には遺言に基づいてあるいは遺産分割協議で財産を分割するという流れが一般的でした。
ですが、民事信託ではこれら財産管理委任契約・成年後見制度・遺言を一本化し、あるいはこれらと併用することにより、財産の所有者のご希望に沿った財産の管理・運用・処分が可能となります。例えば成年後見制度では、生前贈与や相続税対策、投資商品の購入などの柔軟な財産管理を行うのは難しいのですが、民事信託では信託の目的を逸脱しない限り、そうしたこともできるようになります。
また、遺言書では一代先までの遺言しかできませんが、民事信託を利用することで、2次相続・3次相続など、数代にもわたり遺産の承継先が自分で自由に指定できるようになります。